「添乗員って、旅行についていけるなんて楽しそう!」
そんな風に思う方も多いかもしれません。
でも実は、楽しいだけでは務まらない仕事なんです。
私は現役の旅行業務取扱管理者として、これまで多くのツアーに同行してきました。
今回は、実際に私が経験したトラブルとその対処法を、できるだけリアルにお伝えします。
これから添乗員を目指す方や、現場に不安がある方に、きっと役立つはずです。
添乗員の仕事ってどんな感じ?光と影を正直に話します
お客様の旅に寄り添う、影のサポーター
添乗員の仕事は、単に旅程を管理するだけではありません。
旅行中のお客様をサポートする「旅の相談役」といった役割です。
たとえば、観光地の見どころを説明したり、買い物や食事の相談にのったりします。
現場では、「楽しめているかな」「困ってないかな」と常に気を配っています。
小さな表情の変化にも気づけるかどうかが、プロとしての腕の見せどころです。
喜びと大変さ、どちらも本物です
やっぱり一番うれしいのは、「最高の旅になった」と言ってもらえた瞬間です。
そういう言葉をもらうと、本当にこの仕事をやっててよかったと思います。
ただしその裏で、私たちは早朝から深夜までずっと気を張り詰めています。
予想外のトラブルも多く、体力だけでなく精神的な強さも必要です。
「楽しそう」と言われることもありますが、それだけでは続けられません。
よくあるトラブルと私の対処法【出発前編】
集合時間に遅れるお客様
どんなに丁寧に案内しても、集合時間に遅れるお客様は必ずいます。
私がまずするのは、落ち着いた声で連絡を取り、今どこにいるかを確認すること。
「ご連絡ありがとうございます。今どちらにいらっしゃいますか?」と優しく聞きます。
その上で、他のお客様には「少し出発を遅らせます」と説明し、理解を得るようにしています。
もし大幅に遅れる場合は、会社と相談して対応を決めます。
すべてを一人で抱え込まず、情報を共有することが大切です。
急な要望は慎重に対応
お客様から「旅程にない場所に行きたい」と言われることもあります。
そんな時、私は絶対にその場で「できますよ」とは言いません。
「確認してからお返事させてくださいね」と一度持ち帰ります。
理由は、旅程を変えることが法律や契約のルールに関わるからです。
実際、以前お客様が希望したレストランが安全面で問題があり、会社からNGが出たこともありました。
一見些細なリクエストでも、慎重な対応が大切です。
旅行中に起こるトラブルと対応【現場編】
電車や飛行機が遅れた・止まった
天候や機材トラブルで、飛行機や電車が動かないことはよくあります。
私がまずやるのは、駅員さんや空港スタッフに事情を聞くこと。
そしてすぐに会社へ連絡し、次の行動を相談します。
お客様には「代替案を用意していますのでご安心ください」と説明し、不安を和らげます。
実際、飛行機が欠航になった際には、近くのホテルを即手配したこともあります。
お客様の体調不良やけが
旅行中に具合が悪くなる方もいらっしゃいます。
その時は、まず静かな場所へ移動していただき、状態を確認します。
必要であれば、救急車を呼んだり、病院に同行したりします。
海外の場合は保険証の確認や、通訳の手配が必要になることもあります。
私は、訪問国の病院情報や緊急連絡先を、出発前に必ずチェックしています。
それが安心に直結すると感じています。
ホテルやレストランでの不満
「部屋が狭い」「食事が合わない」など、ホテルや食事への不満も多いです。
まずは「ご不便をおかけし申し訳ございません」とお詫びします。
その上で、部屋の変更を交渉したり、別メニューを相談したりします。
以前、夕食の魚が苦手なお客様がいた際、スタッフにお願いして肉料理に変更してもらいました。
大切なのは、お客様の気持ちに寄り添って動くことです。
お客様同士のトラブル
団体旅行では、人間関係のもつれも起こりがちです。
口論が起きたときは、まずお互いから話を聞いて事実を確認します。
「せっかくの旅ですから、お互い気持ちよく過ごせるようにしましょう」と穏やかに伝えます。
でも、どうしても難しい場合は、席を離したり、行動を別にするなど物理的に距離を取ることもあります。
無理に仲直りさせようとしないのも大事な対応です。
添乗員に必要なスキルとは?私が常に意識していること
焦らず、冷静に判断する力
トラブルが起きたときに一番やってはいけないのは、慌てることです。
添乗員が動揺すると、お客様も不安になってしまいます。
私は常に「今何が起きていて、誰に影響があるのか」を考えるクセをつけています。
優先順位をつけて、できることから一つずつ対処する。
その積み重ねが、信頼につながります。
柔軟に対応できる力と交渉力
現場では、想定外のことが頻繁に起きます。
マニュアル通りにはいかない場面も多いんです。
たとえば、観光地が急に休業になった時は、代替地をその場で提案しました。
また、ホテルとの交渉では、状況を丁寧に説明すれば、意外と柔軟に対応してもらえることもあります。
交渉では、こちらも冷静であることが何より大切です。
お客様の気持ちに寄り添う力
トラブルの時、お客様は不安でいっぱいです。
私は必ず「ご心配ですよね。大丈夫です」と声をかけるようにしています。
その一言で、お客様の表情が変わるのを何度も見てきました。
そして、今後の対応を分かりやすく伝えることも忘れません。
専門用語は使わず、ゆっくり丁寧に説明することが信頼に繋がります。
出発前によくあるトラブルと対応方法
集合時間に遅れるお客様への対応
案内を丁寧にしても、どうしても遅刻される方はいます。そんなとき私は、まず冷静に電話して今どこにいるかを聞きます。
「もう少しで到着します」と聞けたら、他のお客様に説明して、少し待っていただくこともあります。もし大幅に遅れるなら、会社に相談して次の対応を一緒に考えます。一人で決めようとせず、必ず情報を共有するようにしています。
旅程外の要望には慎重に
「近くに来たから、あの神社にも寄れませんか?」なんてご要望をいただくこともあります。でも、私はその場ですぐOKとは言いません。
理由は、旅程を変えるには法律や契約の決まりがあるからです。以前、希望された飲食店が安全基準を満たしておらず、会社に確認したら却下されたこともありました。たとえ小さな変更でも、必ず確認するようにしています。
現地でよくあるトラブルとその対応
交通機関の遅れ・運休
天気や機材のトラブルで、電車や飛行機が止まることは意外と多いです。そんな時、まず私は現地の係員に事情を確認し、その情報をすぐ会社へ共有します。
お客様には「代わりの手段を手配中です」とお伝えし、安心してもらうよう心がけています。以前、飛行機が欠航になったときは、近隣のホテルを急いで確保したこともありました。
体調不良やケガ
旅先で体調を崩される方もいらっしゃいます。その場合は、まず静かな場所にご案内し、落ち着いた様子で状態を伺います。
必要に応じて救急車の手配や病院への同行も行います。海外では保険証や通訳の確認も必要になるので、出発前に現地の医療機関情報を調べておくのが習慣になっています。
宿泊や食事に関する不満
「部屋が狭い」「食事が合わない」といった声も時々あります。その時はまずしっかりお詫びをしてから、できる範囲で改善を試みます。
以前、魚が苦手なお客様がいたので、スタッフに相談して肉料理に変更してもらったこともありました。対応次第で、不満が満足に変わることもあります。
お客様同士のトラブル
団体旅行では、人間関係のトラブルも起こり得ます。もし言い合いが始まったら、まずは双方の話を聞いて、事実を確認します。
それでも解決が難しければ、物理的に席を離したり、行動を別々にすることでお互いの負担を減らすこともあります。無理に仲直りをさせようとするのは逆効果になることもあるので、冷静な判断が求められます。
添乗員に本当に必要な力とは?
冷静な判断力
トラブルが起きたときに一番大事なのは「慌てないこと」。添乗員が動揺すると、お客様も不安になります。
私はいつも「今、何が起きているのか?誰に関係しているのか?」をすぐに整理するようにしています。一つずつ優先順位を決めて行動するのが、信頼される第一歩です。
柔軟さと交渉力
現場ではマニュアル通りにいかないことがほとんどです。観光施設が急に閉まっていたときには、近くの代替スポットを探して提案しました。
ホテルの部屋変更交渉もよくあることですが、事情を丁寧に伝えると、意外と対応してもらえることも多いです。冷静な説明と交渉がカギになります。
お客様の心に寄り添う力
一番大事なのは、お客様の気持ちに寄り添うことだと思います。「大丈夫ですよ」と声をかけるだけで、表情がふっと和らぐことが多いんです。
不安な時こそ、ゆっくり、わかりやすい言葉で説明するようにしています。専門用語は使わず、誰にでも伝わる言葉選びを心がけています。
最後に
添乗員の仕事は決して楽なものではありませんが、それでも私は、この仕事に誇りを持っています。旅の中で誰かの不安を取り除き、思い出作りのお手伝いができることが、何よりのやりがいです。
これから目指す方には、ぜひ「人と関わるのが好き」という気持ちを大切にしてほしいと思います。失敗しても、次の現場で成長すればいい。そんな積み重ねが、いい添乗員を育てるんだと思っています。絡先リストと筆記用具を常に携帯しておくことも大切です。